
最近やたらと「思考実験」というキーワードが入ったタイトルの書籍を見かけるようになりました。
アイデア創出に対して以前から情報収集をしている身としては、これらの書籍を読み漁ってみるのも悪くないでしょう・・・ということで、
Amazon評価の比較的高かったこの書籍を手に取ってみました。
書籍の概要紹介
「あなたはどこまで考えられるか?」
というサブタイトルが書かれた表紙です。
あいさつ文でこんな文章が書かれていました。
「あなたの目の前で事故で死んだニワトリの肉で作ったチキンカツレツと、
首を絞めて殺されたニワトリのチキンカツが並んでいる。
二羽とも、死の直前までは全く同じ環境で育てられていた。
さてあなたは、どちらの皿に手を伸ばすだろうか?」
かなり奇妙な話に聞こえるかもしれないが、確かにこの2羽のニワトリは、
生前環境と、その後の状態は同じはずなのに、途中の過程が違うだけで、全くの別物に感じてしまう。
こんな内容が書かれた諸劇のあいさつ文ですが、以外と身近にこういうことあってもおかしくないような問いかけというか、いわゆるこれに対して、自分がどういう考え方を持つかというのが「思考実験」です。
「有り得ないことは考える必要なし」と考える人は、この書籍は楽しめないだろうけど、
ミステリートリックなどが好きな謎解きファンの人には楽しめる書籍だということがありありとわかる、始まりでした。
レビュー
★★★★⭐︎
AIがはやり始めの頃に、しきりに「トロッコ問題」やら「水平思考クイズ」が流行り始めたのが記憶に新しい感じですが、
そういう内容も組み込まれた100のサンプル文章とともに、それをどのように解釈するかという思考実験が楽しめます。
筆者の思考も書かれているんですが、多くの場合、読者に答えを投げかけるようなスタイルがほとんどで、正解はほぼ書かれていません。
もちろん、このような問題には正解がないことの方が多いのが現実なので、事前にそういうことを考えておいて、いざ自分ごととして、その課題を処理しなければいけなくなった時のための実験作業ということですね。
この書籍のポイント
この書籍は、世の中に出回っている有名な小説やら、数奇なストーリーの映画、おとぎ話、神話などをベースに進められていて、
個人的には、書かれている映画は、個人的に好きなものばかりだったので、奇妙な親近感が湧いたということを事前にお伝えしておきます。
特によく出てきた映画は、「トータルリコール」「マイノリティリポート」「時計仕掛けのオレンジ」という、映画史上でも有名なこの3作。
共通点は何かわかりますか?
そうです、「記憶操作」ですよね。
マイノリティリポートだけ、未来予知ですが、未来に起こる記憶を、予知夢という方法で察知する仕組みと、映画内では過去の記憶を頻繁に蘇らせてそれが書き換えられたという衝撃のラストに、衝撃が走るのですが、記憶って確実な過去の実績なのに、曖昧だということがよくわかる作品です。
好都合な銀行のエラー「自分が悪くなければ何をしても良いのか?」
銀行のATMで、機械の故障で多くお金が出てきた時、それを懐に入れてしまうのは、犯罪なのかどうかというと、
直感的には、犯罪と思うんですが、多くの人が、それをポケットに入れてしまって知らん顔をしてしまうのではないかと書かれていました。
確かに、自分が悪くなければ、犯罪を犯してはいないと考える人もいるだろう・・・
これは、人の思考は自分の都合のいいように考えてしまう傾向にあるからなのだそうです。
仮想浮気サービス「バーチャル不倫はダメ?」
ある夫婦は、0年以上のセックスレス状態ですが、夫はとあるバーチャルサービスの疑似恋愛を嫁に隠れてこっそりとやっていた。
それをみた妻は、傷ついたとして、夫に怒りをぶつけたのだという。
夫の頭の中で行った不貞行為は、現実として罰せられるものなのだろうか?
ブタに「私を食べて」と言われたら・・・
ビーガンやベジタリアンが増えている、現代ですが、動物の肉をこよなく愛する人たちも数多くいます。
人間にとって、動物性のたんぱく質は、栄養管理としても重要な要素なので、食べてはいけないという訳ではありませんし、美味しい肉料理は世の中にたくさん存在します。
そんな時に、実際に食べられている動物は、喜んで自分を食べて欲しいと身を差し出している訳ではなく、人間の勝手において人工飼育し、家畜として食べるための命として扱われています。
でも、スーパーで売っている肉を見て、「残酷」という人は少なく、「美味しそう」と考える人の方が多いのが現状です。
実際に、その動物たちが、仮に自ら望んで「自分を食べてください」と言っているとしたら、あなたはどう考えますか?
テセウスの船
壊れたテセウス号という船を修理している時に、すべての部品を交換してしまって、取り替えた部品を使って、さらにもう一つ船を作り上げた時に、どちらが本物のテセウス号なのかというストーリーは、有名な哲学思考ですが、植物の株分けなんかも同じような状態になり得ますよね。
今後人間がクローンされるような時代がきたら、どっちが本当の自分なのかは、何を持って判定すればいいのかを考えさせられる話ですよね。
永遠の命は喜ばしいのか?
その昔、永遠に生きられる方法を見つけたヴィクトリアは、友人も恋人も知人たちすべて、年老いてすでに死んでしまい、一人取り残されてしまった。
死が近づいてこないため、気力も野心もまるで湧かず、どんなことに取り組んでも、虚しく思えてしまう。
その後、永遠に生きられる薬の中和剤を飲むことができ、その後永遠に生きられる薬を火の中に投げ捨てたヴィクトリアの心境は、非常によくわかる感じがした。
Wifiのタダ乗り
同じマンションの別の部屋の人が契約しているプロバイダで、自分の部屋で電波も入り、ゲスト扱いでネットに繋がる環境があった場合、
ゲスト公開をしているWifiを使い続けるのは、悪いことなのか?という問いかけがある。
もちろん、ITスキルが無く、セキュリティ設定を怠っていた契約主の失点もあるが、
断りもせずに忠徳をする人は、道徳心の欠如とそれに対して、お金を支払っている人に対する思いやりが欠如していると考えられる。
もっともっと紹介したいんですが、前半で面白かった内容を抜粋してみました。
興味のある人は是非、手に取ってみてください。
あとがき
100個全てが、非常に面白いという訳では無く、中に非常に考えさせられる内容がふんだんにあったという書籍でした。
結果的に、何度か読み返して面白味を感じる反復系の書籍だと感じました。
人は、何が正しいかわからないことって、日々生活しているといろいろな疑問に直面しますよね。
軽度なものから、重度のものまで、色々ありますが、それらに対してちゃんと自分としての意見や回答を持っておくことで、
思考が明確になっていく感覚が生まれます。
自分の意見を持って、強い意志を持った人って、きっとこういう思考性があるんだということが、この書籍を通じて理解することができましたね。
他の思考実験書籍なども読みたくなった今回の読書でした。
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