
ある会社さんから、経営システムのデータを使って売上データなどを出力するシステムを作って欲しいと依頼され、すでにあるデータベースの仕様について教えてもらおうとしたら・・・
仕様書などは無いとのこと。
まあ、そんな事は想定済みで、そもそも仕様書が潤沢に整っている会社なんて、大企業で管理がしっかりとされていない限り見たことがありません。(ちゃんとしている会社も沢山ありますが・・・)
でも、問題だったのは、そのデータベースについて、その会社内で理解できている人がほぼいないという現状でした。
ほぼというのは、長年その会社さんに勤めていて、なんとなく歴史を見てきた重鎮の人はいたんですが、その人も今月に退社する予定とのことで、今現在有休消化真っ只中で、ほぼ会社にいない状態なのだそうです。
社内でデータベースがイジれるエンジニアもいないし、採用もすぐにはできないので、業務委託に近い形で、うちの会社にヘルプ依頼を出してきたんだとその時点で気がつきました。
理想の仕様書って何?
会社のデータベースで、こういう時にマニュアルの様に仕様書が整っているとしたら、いったいどういう資料があれば今回の様なシステム開発が問題なく行えるのだろう?と考えてみました。
まずは、
DBのER図ですね。
データベースがリレーショナルSQLというのが条件ですが、NoSQLの場合であっても、どんなデータがどういう配置で保存されているかが記されているのが重要です。
次に、SQLのテーブルの役割、テーブル内のカラムの役割に関するメモ書きというか、文章で書かれていると内容が理解できます。
理想的なのは、どういう時にデータが書き込まれて、どういう時に書き換えられる(削除される)、ということが書かれていて、
例外などについてもコメントが書かれていれば、ある程度データの流れを追っていけるはずです。
最後に、そのデータを使って、どういうデータを算出できるかという、開発当初の想定でもいいので、データ活用サンプルがあれば、それが大きな指標になります。
例えば、「⚪︎年⚪︎月の打ち上げ合計値」は、どのテーブルのどの値を使えばいいかが明確になっているだけで、売上についての指標を取り扱う時にその流れで追っていくことができます。
いろいろなマーケティング指標は、こうした元データが正確に取得できないと、その後色々と算術計算した結果、大きく値が変わってしまいますからね。
もちろん、今回依頼をくれた会社さんには、そうした資料も無ければ、それを教えてくれる方も誰もいない状態だったんですね。
それでもって、システム構築を丸投げするって、めちゃくちゃな工数がかかることは容易に想定できます。
オーマイガッ!
海外の会社って引き継ぎ書が無いってホント?
ネットの記事で、海外は日本と違って引き継ぎ書というのがほぼ無いという話を見ました。
そう言えば、海外の人って、しょっちゅう転職しているという話も聞いたことがあります。
だいたい3ヶ月を1クールとして、その中で結果がでなければオサラバになるらしく、会社からファイアー(クビ)を言い渡されなくても、
他の会社のほうが給料が良ければ、1クール契約が終わったタイミングでそそくさと給料のいい会社に乗り換えるらしいんです。
なんとも、海外(アメリカ)っぽい感覚ですが、
同じ釜の飯を食う感覚の日本とはまるで違う思考なのかもしれませんね。
まあ、それはいいとしても、海外って3ヶ月で人がコロコロ入れ替わるとしたら、それぞれ自分の行ってきた仕事をそのままドキュメント化することなどはしていないのだとすると、
その仕事をあとから入ってきた従業員の人が、仕事の内容を汲み取って頑張って行うことになるんでしょうね。
プログラマーの人は、「ソースがドキュメント」という事をよく聞くと思いますが、
スパゲッティコードのドキュメントは、難解論文を読むぐらいの謎解きゲームが発生していることでしょう。
海外の給料が高いというのは、こういう他人のコードを読み取ったり、見たことが無い仕組みの理解が極めて高い能力をもっているからかもしれないと、個人的に思ってしまった。
日本の基幹システム事情
SOX法というのが日本に入ってきた年の事を明確に覚えています。
日本では、J-SOX法という内容で、本家アメリカのSOX法とは違う形で設置されましたが、これは
個人情報保護法という法律が施行するタイミングと近かった記憶もありますが、
それまでいろいろな情報の扱いがザルだった日本をアメリカのように「ちゃんと統制しようよ」と考えられて作られたモノだと認識しています。
そのタイミングで、情報システム部署に属していた自分は、いろいろな企業の管理システムというのを見て勉強していたという時期でもあります。
同時に、ERP(基幹システム)ベンダーの人ともよく話をした時に、だれもが口をそろえて、「日本はアメリカのERP製品をそのまま使うことができない」という事を言っていました。
当時はあまり意味がわからなかったんですが、今回のデータベース仕様が無い会社さんを見て、そのデータベースからシステムを作って欲しいという依頼は日本企業の体制そのままのような気がして、ERPが使えない理由と繋がることが
コネクティング・ドッツされました。
要するに、日本企業は会社の業態を変えずに、いまあるものをこね繰り回して自分たちの都合の良いモノを欲しがる一方、アメリカなどでは、ツールの仕様に合わせて会社の業態を変更することに対してさほど抵抗が無いということですね。
ERPベンダーさんが言っていたセリフに「日本の会社は、意味のない強いこだわりがあるので、会社ごとに個別の対応をしなければいけない」のだそうです。
コレ、その会社の社外からシステムを作っているSEやシステムベンダーの人ならよく分かる事だと思いましたね。
会社の業態の仕組みを少し変えればいいだけなのに、現状を変えると効率が落ちるという理由だけで、システム構築をカスタマイズしたがるその思考、その後業態が少し変わるだけでシステムの組み直しが必要になることが想定できていない証拠です。
システム屋って、そういう未来のことも想定しながら設計するので、ある程度は「こうしたほうがいいよ」って提案するんだけど、今現在にこだわる会社さんって、ほんと無駄が多いんだよな・・・って事、よく思います。
あとがき
こういう、システム運用が便利に行えている会社さんって、それ相当の技術者を抱えているワケですが、優秀な技術者が採用できない会社も多くあるでしょう。
よくできている会社のシステム内容って、あまりうまく運用できていない会社さんに教えてあげられればいいんですが、
それ自体が、売上に繋がる内容だし、秘伝のタレなので、門外不出なのですね。
日本企業って、独自での囲い込みが大好きな組織でもあるのですが、今後海外のように技術者が会社を転職しまくる状況になれば、いろいろな会社の情報が横並びになっていくかもしれませんね。
当たり前のように情報流出の危険性も高まりますが、同じメンバーで頑張っていける会社が改めてリスクも少なく、今後の成長も見込めるのではないかと考えさせられました。
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