
今回は、これまで学習してきたFigmaの機能を使って、実際にUIを設計するための考え方を学んでいきます。
最初に考えたいのは、そもそも何を作るべきなのか という問題です。
例えば、
会社のWebサイトをリニューアルするとします。
すぐにFigmaを開き、かっこいいトップページを作り始めることもできます。
しかし、見た目が優れたサイトを作っても、
問い合わせが増えなかったり、
必要な情報が見つからなかったりすれば、
目的を達成できているとは限りません。
デザインは、見た目を整えることだけが目的ではありません。
ユーザーが抱えている課題を解決し、サービスや事業の目的を達成するための手段です。
今回は、デザインを始める前に考えるべきことを整理し、
FigmaやFigJamを使って「何を作るべきか」を判断する方法を学びましょう。
デザインの出発点は「作りたいもの」ではない
Webサイトやアプリを作るとき、最初に「どんな画面にしようか」と考えがちです。
例えば、次のような要望が出てきます。
- かっこいいトップページにしたい
- アニメーションを取り入れたい
- メニューを使いやすくしたい
- おしゃれなカード型レイアウトにしたい
- スマートフォンに対応したい
これらは、デザインや実装に関するアイデアです。
しかし、これだけでは、何を解決するために作るのかがわかりません。
例えば、問い合わせが少ない会社のWebサイトを改善する場合、必要なのは派手なアニメーションではなく、サービス内容をわかりやすく伝えることや、問い合わせまでの導線を改善することかもしれません。
重要なのは、作りたいものを先に決めるのではなく、
解決したい課題から、必要な機能や画面を考える ことです。
目的・ユーザー・課題を整理する
何を作るべきかを判断するために、まずは3つの観点を整理します。
目的:何を達成したいのか
目的は、Webサイトやアプリを作ることで達成したい結果です。
例えば、会社のWebサイトなら、次のような目的が考えられます。
問い合わせを増やす
サービスの認知を広げる
資料請求につなげる
採用応募を増やす
既存顧客への情報提供を効率化する
目的によって、必要な画面や機能は変わります。
問い合わせを増やしたいサイトと、採用応募を増やしたいサイトでは、掲載する情報も、目立たせるべきボタンも異なります。
ユーザー:誰が使うのか
次に、そのサイトやアプリを使う人を考えます。
例えば、会社のサービス紹介サイトであれば、次のような人が利用するかもしれません。
初めてサービスを知った人
サービスの導入を検討している担当者
料金を比較している人
すでに利用している顧客
ユーザーが違えば、必要な情報も変わります。
初めてサービスを知った人には、サービスの概要や特徴が必要です。
一方、導入を具体的に検討している人には、料金、導入条件、実績、問い合わせ方法などが重要になるでしょう。
課題:ユーザーは何に困っているのか
最後に、ユーザーが目的を達成するうえで、何に困っているのかを考えます。
例えば、次のような課題です。
サービスの内容がわかりにくい
料金が見つからない
他社との違いがわからない
問い合わせ方法が見つからない
スマートフォンでは文字が読みにくい
課題が具体的になるほど、必要な改善策を考えやすくなります。
ただし、これらは仮説です。
実際のユーザーの行動データや問い合わせ内容、ユーザーへの聞き取りなどを確認し、必要に応じて仮説を修正します。
実習:会社のWebサイトを改善する
今回は、架空の会社のWebサイトを改善するケースを考えます。
現状
ある会社では、Webサイトを公開しているものの、
問い合わせが少ないという問題があります。
担当者からは、次のような要望が出ています。
トップページをもっとかっこよくしたい
サービス紹介を充実させたい
問い合わせボタンを目立たせたい
スマートフォンでも見やすくしたい
この段階で、すべての要望をそのまま実装するのは早すぎます。
まずは、目的と課題を整理しましょう。
手順1:目的を決める
今回の目的は、次のように設定します。
「Webサイトを訪れた見込み顧客がサービス内容を理解し、問い合わせできるようにする」
目的を文章にすることで、判断に迷ったときの基準ができます。
例えば、見た目を派手にする案があっても、サービスの理解や問い合わせに役立たないのであれば、優先順位を下げる判断ができます。
手順2:ユーザーを想定する
今回は、主なユーザーを「サービスの導入を検討している企業の担当者」とします。
この人は、サイトを訪れたときに、次のような情報を知りたいと考えられます。
どんなサービスなのか
自社の課題を解決できるのか
料金はいくらなのか
信頼できる会社なのか
どこから問い合わせればよいのか
この情報を整理すると、必要なコンテンツが見えてきます。
手順3:課題を仮説として整理する
この会社で、問い合わせが少ない原因として、次のような仮説を立てます。
サービス内容が抽象的で、利用するメリットが伝わっていない
料金や導入条件がわからず、検討を進められない
実績や事例が少なく、信頼性を判断できない
問い合わせボタンが見つけにくい
これらは原因が確定したわけではありません。
アクセス解析やユーザーの声などを確認して、
どの課題が実際に影響しているかを検証する必要があります。
FigJamで課題を可視化する
前回学習したFigJamを使って、目的や課題を整理してみましょう。
手順1:テーマを置く
FigJamで新しいボードを開き、中央付近に大きなテキストを配置します。
Webサイトの問い合わせを増やす
これを今回のテーマにします。
手順2:3つのグループを作る
テーマの周囲に、次の3つのグループを作ります。
目的
ユーザー
課題
それぞれに付箋を追加し、考えた内容を書き出します。
例えば、次のように整理できます。
| グループ | 付箋の内容 |
| 目的 | 見込み顧客からの問い合わせを増やす |
| ユーザー | サービス導入を検討している企業担当者 |
| 課題 | サービス内容がわかりにくい |
| 課題 | 料金が見つからない |
| 課題 | 実績が少なく、信頼性を判断しにくい |
このように情報を見える状態にすると、何を改善すべきかを考えやすくなります。
手順3:課題と改善案をつなぐ
課題の付箋から、改善案の付箋へ矢印を引きます。
今回は、次のように整理します。
サービス内容がわかりにくい → サービスの特徴と導入メリットを明確にする
料金が見つからない → 料金ページや料金情報への導線を整える
実績が少なく、信頼性を判断しにくい → 制作実績や導入事例を掲載する
問い合わせボタンが見つけにくい → 主要なページに問い合わせへの導線を設ける
この時点では、具体的な画面のデザインは必要ありません。
まずは、課題と改善案が論理的につながっているかを確認しましょう。
必要な画面と機能を決める
課題と改善案が整理できたら、実際に必要な画面や機能を考えます。
例えば、今回のWebサイトでは、次のような構成が考えられます。
| 画面・機能 | 目的 |
| トップページ | サービスの概要と主なメリットを伝える |
| サービス紹介ページ | サービス内容を詳しく説明する |
| 料金ページ | 料金や導入条件を伝える |
| 導入事例ページ | 実績や信頼性を伝える |
| お問い合わせページ | 問い合わせを受け付ける |
ここで大切なのは、ページをたくさん作ることではありません。
課題を解決するために必要な情報を、
ユーザーが適切なタイミングで確認できるようにすることです。
例えば、料金がシンプルであれば、独立した料金ページを作らず、サービス紹介ページに掲載する方法もあります。
必要なページ構成は、情報量やユーザーの行動に合わせて判断します。
優先順位を決める
課題や改善案が複数ある場合、すべてを同時に実施できるとは限りません。
そこで、どの改善を優先するかを決めます。
次の2つを比較してみましょう。
A:トップページに派手なアニメーションを追加する
B:サービスの特徴を明確にし、問い合わせへの導線を改善する
今回の目的が
問い合わせの増加であれば、Bのほうが直接的に課題解決につながる可能性があります。
ただし、実際の優先順位は、課題の深刻さ、実装コスト、効果の見込み、ユーザー調査などを踏まえて判断します。
デザインの見た目だけで優先順位を決めないことが重要です。
優先順位を考える観点
ユーザーの課題をどの程度解決できるか
目的の達成にどの程度貢献するか
実装にどのくらいの時間やコストがかかるか
効果を検証できるか
このように整理しておけば、限られた時間や予算の中でも、重要な改善から取り組めます。
Figma Designに移る前に確認する
FigJamで課題や改善案を整理したら、Figma Designで画面を作り始める前に、次の項目を確認します。
何を達成するためのサイトなのか
主なユーザーは誰なのか
ユーザーは何に困っているのか
どの課題を優先して解決するのか
どのような情報や機能が必要なのか
改善した結果をどう確認するのか
この段階で、すべての細部を確定する必要はありません。
ただし、目的と課題が曖昧なまま画面制作を始めると、途中で構成を大きく変更することになりやすいため、
最低限の方向性は整理しておきましょう。
あとがき
何を作るべきかを判断するには、画面の見た目を考える前に、目的・ユーザー・課題を整理することが重要です。
目的が明確になれば、必要な情報や機能を判断しやすくなります。
また、ユーザーの課題を整理すれば、見た目の改善だけではなく、本当に役立つ改善案を考えられます。
FigJamを使えば、こうした考えを付箋や図で可視化し、整理するために役立ちます。
そして、整理した内容をもとに、Figma Designで必要な画面を設計していきます。
デザインは、何を作るかを決めるところから始まっています。
Figmaを使い始めると、便利な機能を覚えたり、見た目のよい画面を作ったりすることに意識が向きます。
しかし、実際の制作では、機能を使いこなすことと同じくらい、
何を作るべきかを判断することが重要です。
目的に合わない機能を追加しても、ユーザーの課題が解決されるとは限りません。
反対に、ほんの少し情報の配置や導線を見直すだけで、使いやすさが大きく改善することもあります。
これからは、
デザインを始める前に「誰の、どのような課題を解決するのか」を考える習慣をつけていきましょう。
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